肉の消化に、胃酸が欠かせない理由

胃酸というと、どんなイメージがありますか。
- 胸やけを起こすもの
- 胃を荒らすもの
- できれば抑えたいもの
胃酸を抑える薬は、ドラッグストアでも売られています。
なので、抑えたほうがいいもの、というイメージを持っている方もいるかもしれません。
胸やけのときなど、そういう面も確かにあると思います。
でも、お肉を消化するときには…
胃酸がないと始まらないんです。
今日は、胃の中でお肉がどう処理されているか、というお話です。
胃は、タンパク質を「切る」場所
お肉のタンパク質は、とても大きな分子です。
アミノ酸が何百個もつながって、複雑に折りたたまれている。
このままでは、腸から吸収できません。
なので、まず胃で大きく切り分けます。
ここで働くのが、胃酸とペプシン(タンパク質を切る消化酵素)の2つ。
胃酸は、タンパク質をほどく係。
折りたたまれた形を、ゆるめて広げます。
ペプシンは、タンパク質を切る係。
広がったところを、はさみのように切っていきます。
毛糸の玉を、ほどいてから切る。
そんなイメージですね。
ペプシンは、胃酸がないと働かない
ペプシンは、胃の細胞から出てくるときは、まだ「ペプシノーゲン」という眠った状態です。
そのままでは、何も切れません。
なぜかというと…
最初から切れる状態だと、胃の壁そのものを溶かしてしまうからです。
ペプシノーゲンは、胃酸を浴びて初めてペプシンに変わります。
つまり、胃酸が少ないと、ほどく係も切る係も働かない。
胃酸は、お肉の消化のスイッチ。
胃酸が少ないままだと…
お肉は大きなかたまりのまま胃に残ります。
お肉を食べたあとの胃の重さは、ここから来ていることもあるかもしれません。

胃酸の仕事は、ほかにもある
胃酸が働いているのは、タンパク質の消化だけではありません。
- 殺菌:食べ物についてきた菌を、胃で減らす
- ミネラルの吸収:鉄などを、腸で吸収しやすい形に溶かす
胃酸が少ないと、植物性の食品に含まれる鉄は吸収されにくくなります。
菌も、胃を通り抜けて腸まで届きやすくなる。
胃酸が出ないと…
タンパク質の消化にも、殺菌にも、ミネラルの吸収にも影響が出るわけです。
胃酸は、抑えればいいというものではないんですね。

胃酸が少なくなるのは、どんなときか
ピロリ菌
ひとつは、ピロリ菌です。
ピロリ菌は、子どものころに感染することがほとんど。
日本では、1960年生まれの人で約5割、
1980年生まれで約4分の1が感染していると推定されています。
感染が長く続くと、胃の粘膜が萎縮(いしゅく・薄くやせること)していくことがあります。
すると、胃酸とペプシノーゲンを出す細胞が減ります。
まだ一度も調べたことがない方は、検査を受けておくと安心です。
血液や息、便で調べられます。
胃酸を抑える薬
胃酸を抑える薬を飲んでいれば、当然、胃酸は少なくなります。
この薬は、ドラッグストアでも手に入ります。
胸やけや胃もたれのたびに、なんとなく飲んでいる…
そんな方もいるかもしれません。
でも、市販の薬の説明書には「2週間を超えて続けて飲まないこと」と書かれています。
あくまで、短いあいだ使うための薬なんです。
病院で出される薬も、最初の症状が落ち着いたあと、そのまま長く続いていることがあります。
海外では、減らしたりやめたりするための診療ガイドラインが作られているほどです。
長く飲み続けている方は、いまも必要かどうか、一度、医師に聞いてみてください。
自己判断で急にやめるのではなく、相談しながら減らしていくのが安心です。
食べる量が少ない
胃酸は、胃の壁にあるポンプがくみ出しています。
このポンプは、エネルギーを使って動くもの。
日本の研究では、食事のエネルギーが多い人ほど、
胃酸やペプシンの出が多い傾向が見られました。
小さな研究ですが…
食べる量が少ないと胃酸も出にくい、ということはありそうです。
ここで、やっかいなループがあります。
- ①食べる量が少ない
- ②胃酸や消化酵素が減る
- ③お肉が消化できず、食べられない
- ④タンパク質が足りなくなって、さらに消化酵素が減る
少食を続けている方がお肉を食べられなくなるのは、このループに陥っているのかもしれません。
ストレス
体が緊張しているとき、胃の働きは後回しになります。
食事のときは、座って、ゆっくり食べる。
それだけでも、胃は動きやすくなります。
胃酸がしっかり出るようにするには
まず、土台から。
食事をしっかり食べて、エネルギーを満たすこと。
ここが抜けていると、胃酸を出すポンプが動きにくくなります。
そのうえで、食べ方の工夫です。
よく噛む
胃酸は、食べ物が胃に届く前から出始めます。
見る、匂いをかぐ、噛む。
これだけで、脳から胃へ「準備して」という合図が送られるからです。
急いで飲み込むと、胃は準備が整わないまま、お肉を受け取ることになります。
食前に、酸味を少し
梅干しや酢の物を先に食べる。
すると胃の中が酸性に保たれ、ペプシンが働きやすくなると言われています。
消化しやすい形から
いきなりステーキのような塊肉でなく、消化しやすい調理で食べましょう。
- ひき肉
- つみれ
- 煮込み
- しゃぶしゃぶ
細かくする、水分と一緒に加熱する。
それだけで、胃の仕事はずいぶん軽くなります。
胃酸は、しっかり出せる状態にしておきたい
胃酸というと、抑えるもの、というイメージがあったかもしれません。
でも、お肉を消化するのも胃酸。
菌から体を守るのも、鉄を取り込みやすくするのも胃酸です。
胃酸は、抑えるものというより…
しっかり出せる状態にしておきたいもの。
食事をしっかり食べて、ひと口ずつゆっくり噛む。
そこから始めてみてください。

