揚げ物と天ぷら、レモン・大根おろし・コーヒーの水彩イラスト

揚げ物を食べると、胃がもたれる。
天ぷらが、昔ほど食べられない。
食後に、なんとなく気持ちが悪い。

こんなこと、ありませんか。
僕の講座にも、こういうお悩みを持つ方がたまにいらっしゃいます。

「歳のせいかな」と思いますよね。
そういう面も確かにあると思います。

でも、それだけじゃないかも…

今日は、胆汁(たんじゅう)の話をしたいと思います。

胆汁は、肝臓で作られる

胆汁とは、肝臓で作られる消化液。

作られたあとは、胆嚢(たんのう)という袋に送られます。
ここで5〜10倍に濃縮されて、出番を待つ。

そして食べ物が胃を通って十二指腸に届くと…
そこへ流れ出ます。

胆汁の材料は、コレステロールです。

「肝臓で作って、袋に貯めて、食事のときに出す」

胆汁の流れ:肝臓でつくる、胆嚢にためる、食事のときに出す、95%は戻る、一部は便へ

やっているのは、乳化

胆汁のいちばんの仕事は、油を乳化(にゅうか)させることです。

乳化というのは、水と油を混ざった状態にすること。

マヨネーズを思い浮かべてみてください。
あれは酢と油と卵でできています。
そのままでは分かれてしまう水と油が、卵の力で一体になっている。

胆汁がやっているのも、同じことです。

では、なぜ混ぜる必要があるのか…
というと、消化酵素がしっかり働けるようにするため。

脂を分解する消化酵素(リパーゼ)は、水の中で働きます。
ところが油は、なにもしないと大きな粒のまま浮いている。
粒が大きいと、酵素は表面にしか触れられません。

丸ごとのじゃがいもを、皮の外側から少しずつ削っているような状態ですね。

胆汁によって、油を細かい粒に散らしてやると、酵素が触れる面積が一気に増えます。
そうすると、分解が進む。

胆汁は、消化酵素が働ける状態を作る係、ということですね。

出が悪いと、どうなるか

胆汁がうまく出ないと、油の消化が滞ります。
すると、こんなことが起きてきます。

  • 食後に胃がもたれる、むかつく
  • 下痢をする
  • 便が白っぽく、水に浮く(脂肪便といいます)

「胃がもたれる」と言うけれど…
胃そのものではなく、その先で油が処理されずにいる。
そういうこともあるわけです。

それから、脂に溶けるタイプのビタミンは、油と一緒でないと体に入っていけません。
脂溶性ビタミンのA、D、E、Kの4つです。

ビタミンAは粘膜や肌のうるおいを、
Dは免疫や骨を、
Eは細胞膜の酸化を防ぐ働きに関わります。
どれも、地味ですが欠かせないものばかり。

肌が乾く、という方がいます。

油そのものが足りないのかもしれませんし…
ビタミンAがうまく吸収されていないのかもしれません。

胆汁には、もうひとつの顔がある

胆汁には、界面活性作用があります。
洗剤と同じ性質です。

腸の中の、石鹸のようなもの。
小腸を洗って、菌が増えすぎないように見張っています。

小腸は、大腸に比べると菌が少ない場所です。
その状態を保っているものの一つが、胆汁というわけです。

だから胆汁の出が悪くなると、小腸で菌が増えやすくなります。

お腹が張る。
ガスがたまる。
ゲップが多い。
おならがにおう。

こういう状態を、SIBO(シーボ・小腸内細菌異常増殖)と呼びます。
お腹の不調がある方では、めずらしいものではありません。

ここで、やっかいなことがひとつ。

菌が増えると、胆汁はさらに働きにくくなります。
すると菌がまた増える…という往復が起きます。
お腹の張りがなかなか抜けない方は、このループに陥っているのかもしれません。

胆汁は、コレステロールの出口でもある

コレステロール、いらなくなった分はどこから出ていくのか。

大部分が、胆汁からです。

半分ほどは胆汁酸に作り変えられて、
残りの多くは、コレステロールのまま胆汁に混ざって出ていきます。
どちらも、便と一緒に体の外へ。

だから胆汁が出ていないと、コレステロールの排出も滞ります。

コレステロール値が高いと言われると、たいていは「何を食べたか」の話になりますよね。
でも、出ていく側が滞っていることもあるわけです。

そしてもうひとつ。

胆汁は、肝臓が解毒したものを捨てる通り道でもあります。
こちらも、胆汁が出ていなければ滞ります。

胆汁は、消化を助けるだけのものではありません。
体から何かを排出するときの、通り道でもある。

ではなぜ、胆汁が出にくくなるのか

ここまで読んで、「じゃあ、どうして出なくなるの」と思われたかもしれません。
大きいものを3つ挙げます。

ひとつめは、材料とエネルギーの不足です。
胆汁は肝臓が作ります。
作る工場が疲れていたり、材料が足りなければ、量は減る。
少食を続けている方、タンパク質が足りていない方は、ここに当たることがあります。

ふたつめは、ストレス。
体が気を張っているとき、消化は後回しになります。
逃げるか戦うかという場面で、お腹を動かしている場合ではないからですね。

みっつめは、甲状腺の働きです。
甲状腺ホルモンは、体全体の動きを決めるアクセルのようなもの。
ここが落ちていると、胆汁の流れも一緒にゆっくりになると考えられています。

体全体の状態が、胆汁の出方に影響を与える、ということですね。

では、どうするか

特効薬のようなものはありません。
順番に整えていく話になります。

まず、土台から。

胆汁は肝臓で作られます。
作るには、エネルギーと材料が要る。

ごはんをちゃんと食べること、タンパク質を満たすこと。
ここが抜けていると、あとの工夫は効きにくくなります。

そのうえで、4つあります。

1. 油を減らしすぎない

胆汁は、油が入ってくると出ます。
逆に言えば…油を過度に避け続けていると、出す機会そのものが減っていきます。

1日の脂質の目安は、摂取カロリーのうち20〜30%。
1800kcalの人なら40〜60gです。
大さじ1杯の油がだいたい12g、と考えるとイメージしやすいかもしれません。

野菜中心の食事をしている方や、油を控えている方は、届いていないことがあります。

2. 苦味・酸味・辛味

いちばんはっきりしているのは、コーヒーです。

健康な人に165mL飲んでもらったところ、胆嚢が33%ほど縮んだ、という研究があります。
カフェインレスでも同じように縮んだので、効いているのはカフェイン以外の成分のようです。

苦味のある野菜も、昔から胆汁を促すと言われています。
ルッコラ、クレソン、水菜、大根、かぶ、ゴーヤ、ピーマン、ブロッコリー。
たんぽぽ茶もそのひとつ。

ただ、こちらは人で確かめた研究が見当たりません。
試してみる価値はある、くらいに思っておいてください。

酸味も、消化を助ける側に働くと言われます。
梅酢、ポン酢、レモン。

揚げ物にレモンを添える。
天ぷらに大根おろしをつける。
とんかつにからしを添える。

昔からある組み合わせですが…
どれも、消化を助ける側に働くと言われています。

3. 水溶性の食物繊維

胆汁は、使い捨てではありません。
およそ95%は腸で吸い戻され、1日に4回から12回、体の中をぐるぐる回っています。

ただ、回っているあいだに腸内細菌が一部を作り変えます。
こうしてできるものを二次胆汁酸と呼びますが…
これが増えすぎると大腸の負担になる、と指摘されています。

そこで効くのが、水溶性の食物繊維です。

押麦、もち麦、こんにゃく、舞茸。海藻なら、わかめ、もずく、めかぶ。
胆汁酸をくっつけて、便と一緒に運び出してくれます。
出ていけば、肝臓はその分を新しく作ります。

大麦のβグルカンでは、腸から出ていく胆汁酸が4割ほど増えたという報告があります。

4. タウリン

体の中の胆汁酸は、3〜4割がタウリンとくっついた形をしています。
イカ、タコ、ホタテ、あさりに多く入っている栄養素です。

気をつけたいこと

お腹が張りやすい方は、食物繊維を増やすと、かえって苦しくなることがあります。
さきほどのSIBOの状態だと、増えすぎた菌のえさになってしまうためです。

その場合は量を減らして、様子を見ながら進めてくださいね。

それから、白っぽい便が続く、みぞおちの右側が痛む、皮膚や白目が黄色い。
こういうときは、胆嚢そのものの問題であることがあります。

自己判断で済ませず、医療機関に相談してください。

今日からなら

味噌汁に、舞茸を入れる。
ごはんに、押麦を混ぜて炊く。
揚げ物の日に、大根おろしを添える。

このあたりなら、今日からできます。

油を控えることばかり考えてきた方ほど、出す側を整えると…
変わってくるかもしれません。