殻つきの牡蠣、牛肉、納豆、ごはんと、そばに置かれた絆創膏の水彩イラスト

最近、味が薄く感じる。
濃い味でないと、なんだか物足りない。

それから、小さな切り傷がなかなか治らない。
治っても、跡が残りやすい。

この2つ、まったく別の話に見えますよね。

でも実は…
同じミネラルが関わっていることがあります。

亜鉛(あえん)です。

舌の細胞は、どんどん入れ替わっている

僕たちが味を感じているのは、舌の表面にある味蕾(みらい)という小さな器官です。
つぼみのような形をしていて、その中に味を受け取る細胞が集まっています。

この細胞、ずっと同じものが働いているわけではありません。

古くなると新しい細胞と入れ替わる。
動物の研究では、平均で10日前後と言われています。

この入れ替わりのときに要るのが、亜鉛です。

亜鉛は、新しい細胞を作るときに要る

細胞は、分かれて増えることで新しく作られます。
このとき働く酵素(体の化学反応を進める道具)に、亜鉛が部品として使われています。

なので亜鉛が足りないと、新しい細胞がうまく作れなくなります。

入れ替わりの速い場所ほど、その影響が早く出る。

舌の味蕾は、その代表です。
亜鉛が足りないと味蕾がうまく作り直されず、味を感じにくくなることがあります。

傷も同じです。
傷がふさがるというのは、その場所で細胞がどんどん増えるということ。
亜鉛が足りないと、治りが遅れることがあります。

ほかにも、入れ替わりの速い場所があります。
肌、髪、それから体を守る免疫の細胞。

亜鉛が働く場所:味を感じる細胞をつくる、傷をふさぐ、髪と肌を入れ替える、免疫の細胞を増やす

亜鉛が足りないときのサイン

亜鉛が足りないときに出やすいと言われるものです。

  • 味が薄く感じる、濃い味を好むようになった
  • 小さな傷が治りにくい、跡が残りやすい
  • 傷や虫刺されが膿みやすい
  • 肌が乾燥しやすい、湿疹が出やすい
  • 髪を洗うと、抜ける量が多い
  • 風邪をひきやすい
  • 食欲がわかない

爪の白い点も、そのひとつに挙げられます。

亜鉛は、メンタルにも関係があります。
不足すると、イライラしやすくなったり、こだわりが強くなったりする傾向があります。

こうした症状がいくつも重なるときは、亜鉛不足が関わっているのかもしれません。

味が分かりにくいと、濃い味に慣れていく

味を感じにくくなると、どうなるか。

薄い味では、おいしいと思えなくなります。
なので、自然と味の濃いものを選ぶようになる。

味の濃いものといえば…
スナック菓子やインスタント食品、ファストフード。

ところが、こうした加工食品には亜鉛があまり入っていません。

亜鉛が足りない。
味が分かりにくい。
濃い味の加工食品を選ぶ。
亜鉛がさらに足りなくなる。

こういうループに陥っていると、なかなか抜け出せません。

濃い味のループ:亜鉛が足りない、味が分かりにくい、濃い味の加工食品を選ぶ、亜鉛がさらに足りなくなる

「濃い味が好きなのは、好みの問題」
そう思われがちですが…

亜鉛の多い食事に変えてみると…
だんだん好みが変わってくる、ということもありますよ。

亜鉛が足りなくなりやすい人

亜鉛は、次のような人で足りなくなりやすいと言われています。

  • 食べる量が少ない人(少食、ダイエット中、高齢の方)
  • 肉や魚をあまり食べない人
  • お酒をよく飲む人
  • 成長期の子ども
  • 妊娠中・授乳中の人
  • 激しい運動をしている人
  • 男性(女性より多く要る)

亜鉛を食事でどう摂るか

1日の推奨量は、女性8.0mg、男性9.5mg(30〜64歳・日本人の食事摂取基準2025年版)。

特別なものを食べなくても、届く量です。

  • ごはん150gを3食:2.7mg
  • 納豆1パック(45g):0.9mg
  • 卵1個:0.6mg
  • 牛もも肉80g:4.1mg

合わせて、約8mg。

ポイントは、ごはんと肉の種類です。

ごはんは1杯で1mg弱ですが、毎食食べるので積み重なります。
日本人がいちばん亜鉛を摂っているのも、穀類から。

肉は、同じもも肉100gで比べると、
牛は5.1mg、
豚は2.2mg、
鶏(皮つき)は1.6mg。

牛肉は、豚や鶏の2〜3倍あります。

100gあたりの亜鉛:牛もも5.1mg、豚もも2.2mg、鶏もも1.6mg

とびぬけて多いのは牡蠣(かき)で、むき身1個で2.1mg。
ほかに、豚レバー、卵黄、高野豆腐、ごまにも多く含まれます。

亜鉛のサプリは「足りない分だけ」

亜鉛は、食事で足りることが多いミネラルです。

ただ、さきほどの「足りなくなりやすい人」に当てはまると…
食事だけでは難しいこともあります。

たとえば、運動部の中学生の男の子。
アトピーがあって、食も細い。

こんなふうに、亜鉛が要る理由がいくつも重なると、食事だけでは追いつかないこともあります。
お酒をよく飲む人や、病み上がりのときも同じです。

そういうときは、サプリで補ってあげるのも良い方法だと思います。

ただし、亜鉛には摂りすぎの上限があります。
食事とサプリを合わせて、女性35mg、男性45mgまで。

たくさん摂り続けると、銅(どう)の吸収が妨げられ…
貧血などが起きてくるためです。

なので、サプリを使うなら、1日15mgまでが無難かと思います。

味がしないときは、受診を

味がしない状態が続くときは、耳鼻咽喉科で相談できます。
血液で亜鉛の量を測ることもできます。

ごはんと、牛肉から

ごはんを、しっかり食べる。
肉を選ぶときに、ときどき牛肉にしてみる。
納豆と卵を、朝ごはんに。

濃い味でないと、物足りない。
そう感じていたら…
舌が、亜鉛を待っているのかもしれません。