健康診断で「異常なし」でも、元気とは限らない

健康診断の結果が届いた。
並んでいるのは「異常なし」。
でも、疲れやすい。
朝がつらい。
なんとなく、すっきりしない。
元気が出ない。
気が晴れない。
「異常なしなら、気のせいかな」と思いますよね。
今の不調は病院に行くほどでもないんだろうな、と…
でも、基準値が何を表している数字なのかを知ると、
見え方が少し変わってきます。
今日は、健康診断の「基準値」の成り立ちと、分子栄養学での見方をお話しします。
基準値は、健康な人の95%が入る範囲
健康診断の用紙には、数字の横に「基準値」が書かれています。
この範囲に入っていれば「異常なし」。
では、この基準値は、誰が、どうやって決めているのか。
まず、健康な人をたくさん集めます。
その人たちの血液を調べて、結果を低い順に並べる。
並べた列の、真ん中の95%。
これが基準値です。
クラス全員を、背の順に並べるところを思い浮かべてみてください。
いちばん前の数人と、いちばん後ろの数人を外して…
残りの人の背の高さの幅を「基準」にする。
そんなイメージです。
健康な人でも、5%は基準値から外れます。
外れたからといって、すぐに病気というわけではありません。

集めた「健康な人」は、どんな人か
日本で広く使われている基準値のひとつは、
自分で健康だと感じている医療従事者を中心に、6,000人あまりを集めて作られています。
「健康」かどうかは、元気さを測って決めるのではありません…
いくつかの条件に当てはまる人を外す、という決め方です。
外す条件は、こういうものです。
- 太りすぎ(BMI28以上)
- お酒が多い(日本酒で毎日3合あまり以上)
- たばこが多い(毎日20本より多い)
- 定期的に薬を飲んでいる
測ったあとで、糖尿病や貧血などが分かった人も外します。
作った側も、これを「緩い基準」と書いています。
裏を返せば、こんな人も「健康な人」として入っていることがあります。
疲れやすい。
風邪をひきやすい。
いつもだるい。
元気が出ない。
本人が「病気ではない」と思っていれば、外す理由がないからです…
つまり、基準値は「元気な人」の範囲ではありません。
「病気で治療を受けていない人」の範囲に近いものです。
いろいろな人が入っているので、範囲は広くなります。
たとえば、肝臓の数値のASTは13〜30。
尿素窒素は8〜20。
上と下で、2倍以上の開きがあります。
同じ「異常なし」でも…
下の端にいる人と上の端にいる人では、体の中の状態が違っているかもしれません。
臓器が傷つくと、なぜ数字が上がるのか
たとえば、ASTやALT。
この2つは酵素(体の中の化学反応を進める働き手)。
多くは、肝臓の細胞の中で働いています。
細胞は、毎日少しずつ入れ替わっています。
古い細胞が壊れるときに、中身が少しだけ血液に出てくる。
なので、健康な人の血液にも少しはあります。
ところが、肝臓に炎症があったり、脂肪がたまったりすると…
壊れる細胞が増えて、中身が血液に多く漏れ出します。
冷蔵庫の中で卵が割れると、中身が外へ流れ出すのと同じですね。
だから病院では、高すぎないかを見ています。
逆に、低い方はあまり問題にされません。
低くても、何かが壊れているわけではないからです。

「異常なし」でも、元気がないのはなぜか
病院の検査が見ているのは、壊れているかどうか。
壊れる手前の、働きが落ちている段階は、数字に出にくいんです。
それに、体は血液の数字を、できるだけ一定に保とうとします。
たとえば鉄。
鉄が足りなくなると、体はまず、貯金の鉄(フェリチン)を崩して補います。
健康診断で調べるヘモグロビン(酸素を運ぶ鉄)は、最後まで保たれる。
でも、貯金が減った段階で、疲れが出てくることがあります。
貧血ではないけれどフェリチンが低く、疲れを感じている人を集めた研究があります。
鉄を12週間飲んでもらうと、飲まなかった人より、疲れがはっきり軽くなりました。
不調が先で、数字はあと。
「異常なし」でも元気がない、ということは、こうして起こります。

分子栄養学には「理想値」がある
分子栄養学では、基準値とは別に「理想値」という目安を持っています。
元気に過ごすための目安で、上にも下にも幅があります。
たとえば尿素窒素。
基準値は8〜20ですが、分子栄養学の理想値は12〜18です。
基準値の中に入っていても、理想値から外れていれば…
何かが足りないか、多すぎるサインとして見ます。
理想値は、病気かどうかを決めるものではありません。
食事や生活を見直すための目安です。

低い数字を、なぜ気にするのか
病院では問題にされない、低い数字。
分子栄養学で気にする理由を、尿素窒素で考えてみます。
尿素窒素は、タンパク質を体で使ったあとに出る、燃えかすのようなもの。
食べたタンパク質は、アミノ酸に分解されて、体の材料に使われます。
使ったあとに残る窒素を、肝臓が尿素に作り変えて、腎臓から尿へ出す。
その途中で、血液の中を流れているのが尿素窒素です。
なので、食べるタンパク質が少ないと、燃えかすも少なくなって、数字が下がります。
台所のゴミが少ない日は、料理をあまりしなかった日。
それと似ています。
分子栄養学では、これをタンパク質が足りていないサインとして見ます。
食べていても、消化や吸収がうまくいっていないと、同じように下がることがあります。
タンパク質は、筋肉、肌、髪、それに酵素やホルモンの材料です。
足りない状態が続けば、疲れやすさや冷えにつながることもあると考えています。
手元の結果を、もう一度
「異常なし」の欄だけでなく、数字そのものを眺めてみる。
基準値の真ん中にいるのか、端の方にいるのか。
去年と比べて、どちらへ動いているのか。
それだけでも、「異常なし」の見え方は少し変わると思います。
数字が大きく外れている、気になる症状がある。
そういうときは、まず医療機関で相談してください。

